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concept
実在する日本の町の風景を描いている。
それは私の故郷の風景もあれば、たまたま訪れた旅の地で見た風景の場合もある。
共通して描いているのは、その土地に暮らす人々の気配や息遣いの名残である。
道端の地蔵への供え物や、持ち主の工夫が随所に見られる農業用の小屋。
道路にはみ出した植木鉢や、ベランダに干された洗濯物は顔の見えない家主の人柄を勝手に想像させて、さりげない景色の中に愛おしさが溢れている。
そうかと思えば、寂しく佇む空き家に出くわすと、かつての暮らしの記憶を内包するその姿に人の一生を見たような、なんとも言えない感慨が湧く。
そういったありふれた風景の中に、一人一人の暮らしがあり、また、かつてあったことは当たり前のことであるのに、私たちはただ無意識に通り過ぎて気にも留めないでいる。
今を生きる、また、かつて生きてきたほとんどの人の記憶は歴史に残らない。
私は傍観者の視点でそこらじゅうを歩き、描き、記録する。風景の形も、人の記憶も時間が経てば形が変わったり失われていくものであるが、私はただ「その時、そこに在った」ということをひたむきに描いていきたいと思っている。
2024年 八太栄里
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